自分の頭の中にある紙相撲が、着信したiPhoneのバイブレーションによってコトコトと土俵際へ移動していく。電話が鳴り止むのを待ってから、台から落ちそうになっている力士を指でつまんでは中央に戻す。電話が鳴ったらまたそれの繰り返し。自分に紐づけられた複数のデバイスが家の中で常に立ち上がっているため、ひとたび着信があると増幅された通知の振動が部屋を揺らし続ける。エアコンはかかったままで窓はさっきから開いている。ささやかな環境破壊に気持ちよさを知り、違法にアップロードされた漫画を読む。

毎月届く電気とガスの検針票の紙を捨てる作業が、自分の人生の何パーセントかを占領していることに腹が立つ。電気代が毎月いくらだとか、そういうのは本当に心底どうでもいい。一応毎回シュレッダーにかけてるけど誰が盗むんだこんなもん・・・。ベランダ側に枕を置いて寝ていると昼間は顔が暑い。

(2020/11/13)

もどる